フロンティア
インタビュー

仲山進也さんに聞く① 人生100年時代、組織の中での働き方とセカンドキャリア 『組織の「ネコ」という働き方』の著者

ぬるま湯(!?)から、一歩踏み出す体験を

「楽天」初期メンバーの一人で、社内唯一のフェロー社員(兼業自由・勤怠自由)である仲山さん。近年の著書「『組織のネコ』という働き方」(2021年11月、翔泳社)では、働き方のタイプを「ライオン」「イヌ」「トラ」「ネコ」に4分類。その中でも、強みを生かして組織にも社会にも貢献する、自由で魅力的な全国の「トラリーマン」(トラとサラリーマン掛け合わせ)たちを紹介して、新しい働き方のヒントを伝えました。仲山さんは、「4つのうち、どのタイプが優れている」と強調するのではなく、それぞれの価値観に基づきながら、「お客さまのために・楽しく・健やかに働ける社会」の実現を提唱しています。自らも「トラリーマン」として多方面で活躍する仲山さんに、自分の働き方や将来に漠然とした不安を抱える多くのミドル世代に向けて、貴重なアドバイスをもらいました。

仲山考材株式会社 代表取締役/
楽天グループ株式会社 楽天大学学長
仲山 進也(なかやま・しんや)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業。シャープ株式会社を経て、創業期の楽天株式会社に入社。2000年に楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。2004年に「ヴィッセル神戸」公式ネットショップを立ち上げた。2007年に楽天で唯一のフェロー社員となり、2008年には自らの会社を設立。2016~2017年にかけて「横浜F・マリノス」とプロ契約を結び、コーチ向け・ジュニアユース向けの育成プログラムを実施。20年にわたり、中小ベンチャー企業を支援しながら、指示命令のない自律自走型の組織文化・チームづくり、長続きするコミュニティづくりや働き方を探求し、関連する著書も数多い。「子どもが憧れる、夢中で仕事する大人」を増やすことがミッション。「仕事を遊ぼう」がモットー。

―「『組織のネコ』という働き方」という著書で、仲山さんが一番伝えたかったことは何でしょうか?

まず、この本を出したあとに、「イヌがだめで、ネコがいいのですか?」というリアクションが結構ありました。決してそうではなく「健やかなイヌ」と「健やかなネコ」がよい状態で、だめなのは「こじらせたイヌ」と「こじらせたネコ」だと、話しています。「こじらせたイヌ」とは、思考を停止した状態でただ仕事をこなすこと。極限は、会社に不正を指示されたら、心を無にして不正をしてしまうこと。「こじらせたネコ」は、正当な理由がなく、「やりたくないことは、やりたくない」となってしまうこと。イヌとネコの違いは、組織優先と自分優先。ただし、基本の大事なところ、つまり「お客様のために価値を提供する」という部分は一緒です。ネコの人が健やかに働けるためには、「お客さんに価値をきちんと提供して、喜んでいただいている」という軸をぶらさないこと。そこ外すと、「ただの遊んでいるやつ」になってしまう。イヌの人は、「上司に喜ばれるように」と、上司ばかりに価値を提供し続けると、お客さんに価値を提供しなくても、給料をもらえるという状態になってしまいます。そうすると会社を辞めた後に、「使い物にならないおじさん」が生まれてしまいます。
当たり前ですが、仕事とは価値を生んで、お客様に「ありがとう」やお金でかえってくる。「セカンドキャリアをどうしよう?」と困っている人は、正直、価値を提供していないのにお給料をもらい続けてきたツケだと思っています。

 

自由かつ持続的な「ネコ」「トラ」の働き方にスポット

仲山さんは著書の中で、組織の中での働き方を動物に例え、「トラ」「ネコ」「ライオン」「イヌ」の4タイプに分類しました。会社の指示命令に従順でさえあればよかった、これまでの時代にはあまり評価されず、活躍しづらかった「ネコ」、「トラ」気質の人にスポットを当てて、働き方の選択肢を増やすことを提案しています。   「ネコ」、「トラ」気質の人は、自分の強みを発揮してお客さまに直接向き合うことで、組織にも会社にも貢献していくことを「自分の使命」として選びます。お客さまや組織にとって価値を生み出すので、周囲から必要とされ仕事が長続きします。著書では、そうした自由かつ持続的な「トラ」の人たちの働き方の数々を紹介しています。そして、モヤモヤしながら働いているネコ体質な人、いわば「イヌの皮をかぶったネコ」な人たちに、「組織のネコ」からはじめようと呼び掛けています。

 

【組織のイヌ】
飼い主に忠実なイヌのように、会社の指示命令に従順な人。自分の意志よりも社命を優先して行動する。
【組織のネコ】
組織には属していても、ネコのように自由きままな人。自分の意志がしっかりあるので会社の指示を何でも聞くとは限らない。
【組織のライオン】
群れの中心的存在(ボス)。ヒエラルキーの頂点に君臨し、組織を引っ張る。ほえると怖いが情に厚く、面倒見がよい。従来の「優れたリーダー像」。
【組織のトラ】
社命より使命で働く。突出した成果と個性があり、お客さんの一部に熱狂的なファンがいる。社外の人とチームをつくっている。

 

確かに、地域創生セカンドキャリア塾のローカルインターンシップに参加して、自分の会社から飛び出し、地方の企業で働いたり、体験したりする中で、「ありがとう」という言葉に感動する50代は、多いなと感じます

社内相手の仕事が多いと、「ありがとう」が言われなくなります。前の職場(シャープ)がそうでした。楽天に来て、お客さま(店舗)から直接、「ありがとう」と言われる体験をして、どっぷりはまりました。「この仕事、超楽しいかも」と。自分で何らかの価値を提供して、お客さまから直接、「ありがとう」と言われる体験を「ネコトレ」と名付けています。今、勤めている会社だと、どう頑張ってもお客さまと接する機会がつくれない、組織が巨大、管理部門で働いているという場合は、インターンみたいなサービスを利用してみたり、副業でお客さまと直接に接したりして、「越境体験」をしてみては、いかがでしょうか?

 

【組織のネコ度チェックリスト】

【 】①「仕事は苦役であり給料はガマン料」という考え方にモヤモヤを感じる

【 】②お客さんに喜ばれない(意味のある価値を提供しない)仕事はやりたくない

【 】③指示された範囲外(KPIと直接関係しないこと)でも、良いと思ったことはやる

【 】④自分の信念に反する指示は、しれっとスルーすることがある

【 】⑤肩書や出世競争を勝ち上がることに、きょうみがない

【 】⑥向いていないし自分でなくてもよい仕事をずっとやらされるのは、無理

【 】⑦社内キャリアのレールの先に到達している人の姿にワクワクしない

【 】⑧失敗しないことより、怒られたとしてもチャレンジすることの方が大事

【 】⑨群れに組み込まれるのがニガテ

【 】⑩同調圧力をかけられるのも、かけるのもキライ

執筆者:HaNa
ライター
1974年生まれ、埼玉県出身。ジャーナリストの父の背中を見て、新聞記者になりたいと思い新聞社に入社。社会部を振り出しに、政経部、地方部などで16年間、記者として働く。「取材、書く」だけではない、企画から提案、地域おこしまで何でもできる新しい時代の記者を目指している。家庭では夫(単身赴任中)と9歳の息子の3人家族