愛すべきトホホ人図鑑

「近寄ってみたらイメージ違った」

このひとは自分では自分のことはわからないという顕著な例だ。大き目の企業に長く勤め、それなりに大き目の仕事もしてきた。人前でしゃべることも苦ではなく、部門を横断するプロジェクトへの参加も多いタイプ。いますよね、こういう人。ある日、だいぶ年次の違う後輩と親しくなり、飲んで悩みを聞く間柄に。飲みの席で、「近寄ると、イメージ全然違いますよね」と告白された。(なに、意外と優しいとか???)と思って聞けば、遠目にはなんでもできそうなのに、実は簡単な資料整理やスケジュールの調整がめっぽうへたで、イメージとだいぶ違うという。「かっこいい人かと思ってたけど、安心しました!」。どういうことよ??と思ったものの、不思議と楽になれたような気持ちも。頑張りすぎは、周りも疲れる。このタイプの中には自己イメージキープのために頑張りすぎて擦り切れていく人も…身近な人の指摘で自分を発見できたのはかなりラッキー。

 

「あなた、いつも失敗してるよ?」

別の角度から見てみよう。経験もあるしそつなくこなしている気分でいても、働いていればスランプに陥ることだってある。何をしても上手くいかない、負のスパイラル…そんなときこのタイプは自尊心の塊になる。悲劇の主人公になってしまうのである。会社を辞めようかという勢いで上司に「この仕事を続ける自信がありません、チームを導いていけません」などと思いつめて告げたりする。引き止めたって無駄、もうダメです、止めないでください、と言おうという覚悟もしていたりする。悲壮なのは意外と自分だけ。相談した相手は笑って、「今回だけじゃないよ、あなた割といつも失敗してる、だから気にすることはありません」と言ったりする。ズコッ。

これわたし?と思ったら
自己観察と情報開示を積極的に
できる人ほど、意外に自分が見えていない。周囲は気を使って何も言ってくれないという落とし穴もある。正直に指摘してくれる人を大切にし、言葉に耳を傾けよう。言ってもらいやすい雰囲気は、自分で作るしかない。指摘をいただけるように、どうでもいい話をしたり、服装にも抜けをつくろう。失敗も開示しよう。きっと丸ごとのあなたを周囲が見てくれるようになるはずだ。

愛すべきトホホ人図鑑とは

自分のことって自分では意外とわからないもの。「それなりにがんばってきた。成果だってなかなかのもの(周りもそう思ってくれているに違いない…)」。と思っていても、長所と自認するところはちょっと鼻についていたり、短所と思っているところが意外と人に愛されていたり。そこかしこにいる「愛すべきトホホ人」の中に、もしかしたらあなたに似た人がいるかもしれません。違う角度から自分を見つめ、「次のじぶん」への一歩を踏みだすステップを、広く、軽くするきっかけになれば幸いです。

執筆者:ふしみ しょうこ
ライター
北海道生まれ東京在住のコピーライター。会社勤めと並行して、ふるさと北海道にまつわるコラムを書いたり、精神的支柱である演劇の界隈で活動、執筆する。人生は劇場であり、いただいたお役を工夫して演じるのが面白さ、という気持ちで生きております。