愛すべきトホホ人図鑑

どうも視点が外国人

以前から一定数いる。定年近くなると和の衣装をまとい、蕎麦を打ち始める御仁。それはそれでわかるのだ。「何か趣味を持ちたい、できれば実益もあり、ちょっとした文化の香りも…」というニーズの結節点に、蕎麦があるから。今回取り上げるのはそういったひとではなく、もっと日本文化を「学習」しなくてはならなくなったひとの話だ。

近年、社員研修に茶道を取り入れたり、禅寺での座禅体験をしたりする会社は多い。京都まで行って芸舞妓の踊りを見たり、文楽教室に行ったり。日本に生まれ育ったとしてもなかなか触れない世界だから、外国人でなくても異文化体験だ。そして思う。これが本当に日本の文化のコアなのか? 経験不足かつ勉強もしていないから判断できない。浅い理解だけを残して研修は終わり、なんとなく日常に戻っていく。一週間後、ポチってすっかり忘れていた『茶の本』『武士道』『逝きし世の面影』などの日本文化本がアマゾンから届く…。

 

昭和の旦那のような仕上がり

かと思うとある日突然日本文化沼にどっぷりはまる人も。
DNAが目覚めるのか、京都に魅せられ、芸者さん舞妓さんとの話題に事欠かぬよう歌舞伎座など劇場に通って教養を深め、自ら着物を着るようになり、所作を磨くために和のお稽古事をいくつかはじめる…。実際にいるのだ、そんな人が。
面白いくらいのスピードで沼落ちし、暇さえあればきものの誂えのことや次の京都行きのことを考えている。遊び方も変わってきて、金払いも良くなる。小腹がすいたらスタバより寿司屋だ。今の時代死語とも言えそうな「粋」とか「甲斐性」とか、そんな心が宿ってくるのだろうか。おなか周りにも昔の実業家のようなおおらかさが醸し出されてきて、これはもしかしたら新しい日本文化の継承の在り方なのでは…などど思わせる。

これわたし?と思ったら
身近な日本を見つめてみよう
アカデミックにならずとも、暮らしの中は日本らしさがいっぱいだ。
日本に生まれて日本を意外と知らない世代としては、近所の神社の鳥居の形をよく見るくらいのことから始めてもいいのではないだろうか(神社の鳥居にバリエーションがあることを私は最新知りました)。そこから興味をじわじわ広げて行けば、きっと英語の先生にオリジナルの日本文化話が披露できるはずだ。

愛すべきトホホ人図鑑とは

自分のことって自分では意外とわからないもの。「それなりにがんばってきた。成果だってなかなかのもの(周りもそう思ってくれているに違いない…)」。と思っていても、長所と自認するところはちょっと鼻についていたり、短所と思っているところが意外と人に愛されていたり。そこかしこにいる「愛すべきトホホ人」の中に、もしかしたらあなたに似た人がいるかもしれません。違う角度から自分を見つめ、「次のじぶん」への一歩を踏みだすステップを、広く、軽くするきっかけになれば幸いです。

執筆者:ふしみしょうこ
ライター
北海道生まれ東京在住のコピーライター。会社勤めと並行して、ふるさと北海道にまつわるコラムを書いたり、精神的支柱である演劇の界隈で活動、執筆する。人生は劇場であり、いただいたお役を工夫して演じるのが面白さ、という気持ちで生きております。