愛すべきトホホ人図鑑

こんな日がまた来るなんて!

30年ほど前、大人気だったのにある日突然活動を休止したバンド。昨年、彼らが一年限定での活動再開を発表した。前触れなくテレビ番組に出演し、演奏を披露した彼ら。見た人なら同意してもらえると思うが「懐かしい」というよりも「うおーかっこいい!」と叫びたくなるようなルックスと演奏だった。空白の30年、四人四様に重ねてきたキャリアと年月が確実に人間の魅力となってあふれ、しかも、旧ファンを集めてガッポリ稼ごう、みたいな下心が微塵も見えないバンドの出現であった。
昔夢中でキャーキャーしていた女性たちも今や50代半ば。普通、ライブなんて…ロックなんて…といいそうなお年頃だが、今回は違った。ある有名ファッションジャーナリストさんも「ハイブランドのジャケットに男**組のツアーTシャツを合わせて着こなすわ!」と高らかに宣言していた。彼らのかっこいい「エイジング」が、大人に「推す」喜びを与え、ファッションプランにまで影響する。刺激的だ。

私、水曜からちょっとLAなんだよね

もうひとつの例は、これも大人ならではの推し活の例。
大人になれば仕事の進捗計算は慣れたもの。またリモートワークが浸透し、いつどこにいても業務を滞らせないことも実証済みだ。そこで見出しのセリフ。彼女は、東京はもとよりアジア圏全体でなかなかチケットが取れないスーパーアイドルのライブに行くため渡米するという。その言い方がちっとも大げさでなく、「そこにチケットがあったから」とまるで渋谷に行くかのような軽やかさ。仕事を休むわけでもない。そう、考え方を変えれば今は非常に自由な世の中だ。自分の裁量と自分の興味を掛け合わせて、時間もお金も使い、「推し活」する。それができる時代を満喫している彼女の姿は、キラキラとまぶしい。

これわたし?と思ったら
推しは推せるときに推せ
他人に理解されなくても、100%の愛を注げる対象があるということ。人間でも、ジャンルでも、対象は何でもいい。何かを推せる人生は幸せだ。それは若者だけではなく、少しばかり疲れを感じやすいセカンドキャリア世代にこそ必要なエネルギー源となるのではないだろうか。推しがいることで日々の生活にハリが出て、推しに対して恥ずかしくないよう仕事も頑張れる、と聞く。あなたのイチ推しは、何ですか?

愛すべきトホホ人図鑑とは

自分のことって自分では意外とわからないもの。「それなりにがんばってきた。成果だってなかなかのもの(周りもそう思ってくれているに違いない…)」。と思っていても、長所と自認するところはちょっと鼻についていたり、短所と思っているところが意外と人に愛されていたり。そこかしこにいる「愛すべきトホホ人」の中に、もしかしたらあなたに似た人がいるかもしれません。違う角度から自分を見つめ、「次のじぶん」への一歩を踏みだすステップを、広く、軽くするきっかけになれば幸いです。

執筆者:ふしみしょうこ
ライター
北海道生まれ東京在住のコピーライター。会社勤めと並行して、ふるさと北海道にまつわるコラムを書いたり、精神的支柱である演劇の界隈で活動、執筆する。人生は劇場であり、いただいたお役を工夫して演じるのが面白さ、という気持ちで生きております。