愛すべきトホホ人図鑑

気が付けば、自分がしゃべっている

経験豊富なセカンドキャリア世代にありがちなトホホなのである。
聴く気がないわけではないし、しゃべりたいわけでもないのに、いつの間にか話の主導権を握ってしまうのだ。

例えばこんなとき。「**さんは、会社を辞めようとしたことってあるんですか?」。ここでの正解は「あるよ」「ないよ」のどちらかで答え、「あれ、君、やめたいと思ったりしてるの?」と相手に振ることだろう。

だって何か話があってわざわざ呼び出しているんだから。しかしなぜだろう。「あるよ、私だってね、そう、3回はあるな。最初は…」と話し始めてしまったりする。そうなると止まらない。質問したほうもうんうんと聴いてくれるものだから、つい会の趣旨を忘れてしゃべり倒してしまい、時間があっという間に過ぎていく。

 

質問に対して真面目に答えようとしすぎ

なぜ、軽くスルー出来ないのか。それはキャリアを積んだものが持つある種の真面目さ、つまり質問に対し自分の経験を話して役に立ちたいという心があるからではないだろうか。
しかし、たとえ相談事でなくとも、日常生活においては若いひとはとっかかりとしての質問を投げていることが多い。

「そのかばん、使いやすそうですね」といわれたならば、「うん、軽くてね。で、あの会議のことだけど…」くらいがちょうどよいのかもしれないのである。それを、ポケットがあるだのパソコンが取り出しやすいだの細部にわたって使いやすさを解説し、しまいにはどこで買えるのかのリンクまで送ったり。情報を求められていたわけではないことにハッと気が付くのは大体翌朝だったりする。これはわたし自身の実話。

これわたし?と思ったら
いちばん役に立つのは聴くことと意識してみよう
もちろん、時と場合、関係性にもよるだろう。しかし、自分よりも若い人がわざわざ時間をつくって話をしに来たら、まずは「聴く」に100%全振りするくらいでちょうどいいのではないだろうか。意見を述べるのは、「どう思いますか?」といわれてから。相手の質問の奥にある、本当は聴いてほしい何かを瞬時に察知するのが大人のたしなみというものだ。聴く、聴く、聴く。自戒を込めて!

愛すべきトホホ人図鑑とは

自分のことって自分では意外とわからないもの。「それなりにがんばってきた。成果だってなかなかのもの(周りもそう思ってくれているに違いない…)」。と思っていても、長所と自認するところはちょっと鼻についていたり、短所と思っているところが意外と人に愛されていたり。そこかしこにいる「愛すべきトホホ人」の中に、もしかしたらあなたに似た人がいるかもしれません。違う角度から自分を見つめ、「次のじぶん」への一歩を踏みだすステップを、広く、軽くするきっかけになれば幸いです。

執筆者:ふしみしょうこ
ライター
北海道生まれ東京在住のコピーライター。会社勤めと並行して、ふるさと北海道にまつわるコラムを書いたり、精神的支柱である演劇の界隈で活動、執筆する。人生は劇場であり、いただいたお役を工夫して演じるのが面白さ、という気持ちで生きております。