愛すべきトホホ人図鑑

「お花とか、いらないからね」

先輩が退職するとなれば、どんなお花を差し上げてお別れとしようか、残されるほうはけっこう考えるもので、数日前からなんだかんだと準備をしている。

ある送別セレモニーの前日、同僚からメールが届いた。「どうしましょう、退職する**さん、お花は辞退するっておっしゃってます!」。はあ? 前日に辞退といわれても間に合わない。っていうか、別にあげるって言ってないのに、いらないってなに???

しかし最近、この手の話はそこかしこで聞く。もらうほうにしてみれば送別の花なんて時代に合わないしこっぱずかしいよ、という気持ちもあるのだろう、わからないでもない。でも、そこは素直に受け取ってくれたら、周りも区切りがついてありがたいのですよ。辞退しないで。

 

「お別れ会、こんな感じで…」

そうかと思えば自分で盛大な送別会を仕切る人もいる。

退職の数か月前、気心の知れた機動力のある後輩を喫茶店に呼び出し、詳細なブリーフィングを実施。予算、呼ぶ人のリスト、余興、スピーチなど、完璧な構成で、「あとは司会、よろしく頼むよ」。彼は知り合いの会社に、自分の会社員時代の思い出写真をまとめたムービーも発注していた。抜かりない。

ここまではっきりしていると頼まれるほうも気持ちが良かったそうだ。ご本人の心が満たされるように、希望を叶える会を実行すればよいだけなのだから。お別れ会を誰かがしてくれるかな~どうかな~とモヤモヤしているようならば、この人のように感謝の気持ちを自分から示す会をやればいいのだ。何かに似ている…あっ、生前葬。

これわたし?と思ったら
区切りのつけ方をイメージしてみよう
セカンドキャリア世代になれば、定年でなくとも会社や組織を去る瞬間が身近だ。例えば、退社のスピーチをするとして自分はその時、どんな言葉を語るのか。イメージしておくことは意外と大事なのではないだろうか。そしてできたら、あまり意識しすぎずに、ねぎらいのギフトは受け取ってほしい。誰かがいなくなるということは、残る人にとってもひとつの区切りで、けじめをつけたいものだから。花束を抱えて電車に乗っている先輩世代の姿は、良き時代の会社員を思わせ、ほっこりする景色を生み出すはずだ。

愛すべきトホホ人図鑑とは

自分のことって自分では意外とわからないもの。「それなりにがんばってきた。成果だってなかなかのもの(周りもそう思ってくれているに違いない…)」。と思っていても、長所と自認するところはちょっと鼻についていたり、短所と思っているところが意外と人に愛されていたり。そこかしこにいる「愛すべきトホホ人」の中に、もしかしたらあなたに似た人がいるかもしれません。違う角度から自分を見つめ、「次のじぶん」への一歩を踏みだすステップを、広く、軽くするきっかけになれば幸いです。

執筆者:ふしみしょうこ
ライター
北海道生まれ東京在住のコピーライター。会社勤めと並行して、ふるさと北海道にまつわるコラムを書いたり、精神的支柱である演劇の界隈で活動、執筆する。人生は劇場であり、いただいたお役を工夫して演じるのが面白さ、という気持ちで生きております。